ボストン日本人研究者交流会

毎月1回開催のボストン界隈の日本人勉強会。今日のテーマは、

  • 「宇宙の始まりへの招待−古代の宇宙観と最新宇宙論− 」
  • 「世界からみた日本の医療制度〜なにが問題なのか?:医療費30兆円の使い道〜」

の豪華二本立て。

まず1本目は宇宙の話。ハーバードで宇宙物理学を研究されている方から、地球の周りの惑星から太陽系、銀河系、宇宙の果てまでの空間の広がりを丁寧に説明していただきました。

中国やエジプト、ローマの古代から現代までの宇宙観の変移や、宇宙の年齢=137億年という発見、宇宙のすべての空間(私たちの身の回りを含む)には「ダークマター」とか「ダークエネルギー」という怪しげなものに満ちあふれていること(満ちあふれていないと説明がつかないこと)など、知らなかったことも多いのですが、個人的に今回の一番の収穫は、宇宙の始まった瞬間の前の姿がぼんやりとながらも教えてもらえたことでした。

その昔、宇宙の始まりについての本読んだとき、「宇宙はビックバンから始まった。ただ、なぜ、ビックバンが起こったかはよくわかっていない。そこは、神様によって偶然を作ってもらうしかない」というくだりがあって、宇宙学に対する不信感というか、科学の限界を感じたのです。今回の発表者の方はそこを、「ビックバンの前は虚時間という時間が存在しない場。そこでこれこれこんな現象が生じることによって宇宙が始まったと考えられている」と様々な理論を提示してくれました。

人間原理や神の思し召しだと行って、すべて偶然のせいにするのは易しい。しかし、科学者は最後の最後、究極理論が出来上がる手前まで、宇宙に起こる不思議な現象を人間原理や神の責任にすべきではない。
(最後のメッセージ)

科学の最前線は、哲学や宗教との戦いというのをよく聞きますが、それを乗り越える努力を続ける方々に敬意を表したいと思った次第です。

介護保険のプロジェクト評価

今日はPlanning and Evaluation of Health Programsというプロジェクト評価の授業のグループワークプレゼン。世界のどこかで行われているon-goingなプロジェクトを選び、その評価の枠組みを作りましょう、というもの。我がチームが選んだのは日本の介護保険制度。「日本に比べてアメリカは20年遅れている」(グループメンバーのアメリカ人)という意味では、アメリカ人学生にとっても意外と興味深いネタなのかもしれません。

 

さて内容はともかく(ここをご覧になっているであろう超専門家の前では恐れ多くて語りたくない)。実はこの授業のプレゼンをもって、うちの学校でのプレゼンは終了になりそうです。ということで、めずらしく、プレゼンにアニメーションをちょこっと付け加えてみました。

えぇ。ぼくの遊びのプレゼンしか見たことない人は、驚くかもしれません。だって、遊びのプレゼンだと、アニメーションがついていないスライドはほとんどないはずですもん。そういえば、音声含め15分自動運転、というやつもありましたね。

が、ぼくは授業のプレゼンではほとんどアニメーションを使いません。ちなみに一番きらいなアニメーションは、あの、一行ずつ文章が現れる仕組み。「隠してないで早く見せろ」と思ううえに、実際出されてみると、まったく隠す必要がない場合がほとんどです。あぁ思い出すだけで腹が立つ。

まぁそんな個人的感情もあるので、今回挑戦してみたのは、スライドの切り替えをいかに「見せるか」と言う点でした。あのスライドを無言で切り替えるのって、なんとなくいやじゃないですか。なので、今回はプレゼンテーターの上手下手にかかわらず、技術でそこをカバーできないかなと思った次第で。使ったアニメーションは、フェードアウトと線移動。これらを複雑に組み合わせることによって、普通とはちょっと違ったスライド切り替えを試してみました。

パワーポイントなんて、こっちに来る前は、結婚式の二次会用のソフトだと思っていたのですが、こちらに来て、何百枚、いやたぶん、1000枚以上スライドを作って、2年間でかなり満足しました。そういえば、未公開作品上映会を学校でしようといっていたのですが、あれはどうなったんでしょうねー。お勧めはゴジラが走り回るやつ(1発ボツになりましたが)。

プレゼンの技術向上をしたい方、是非一度、「プレゼンテクニックまとめのまとめ+スギヤマメソッド」をお読みください。

環境派vs産業派 @ Air Pollution

いつぞや書いたEnvironmental and Occupational Epidemiologyの授業で、自分たちのグループの出番が回ってきました。11人からなるグループに10本の論文が渡され、各論文の中身を分析して、自分側の正当性を主張し、相手側の弱点を攻撃するというもの。今回の僕たちのテーマは、「大気汚染が低出生体重児出産に関係しているか否か」。我がチームのプレゼンタイトルは、"Murky Findings, Mixed Messages, and Public Angst"(曖昧な研究成果、ごちゃ混ぜのメッセージ、そして社会の混乱)。タイトルから分かるとおり、産業側に立ってのプレゼンです。

10本も論文の中には、両者の関係を示したデータがゴロゴロしているので(というか、関係を発見したものしか論文にされない)、今回我がチームは、論点を2つに絞り込み、集中的にそこを攻めるようにしました。簡単に言えば、

  • 出生児の体重が減ったのは、大気汚染が原因ではなく、他に原因がある
  • 関係があるように見えるのは偶然の産物である(いっぱい実験をすれば、数個ぐらいは関係があるようなものも出てくるでしょう、という論理)

ということを、数字を出しながら証明していく手法をとりました。

始める前には、「互角かやや弱いかなー」と思っていたのですが、環境側チームが、都合のよいデータばかり切り取ったグラフをプレゼンで連発してくれたおかげで、QAセッションでは2番目の論点で攻撃しまくれました。都合のよいところだけを切り取って発表すると、それがばれた時には、観衆にとっても悪印象として跳ね返ります。

この感覚、何だっけなー、と思い返してみると、その昔、そんな関係の仕事をしていたときに、いかに「都合のよいデータをもっともらしく見せるか」、言い換えると、「世界中の誰に聞かれようが、ひるむことなく、自信を持って説明できるに耐えうる資料(ニュートラル)だけど、一目でメッセージを伝えれるような資料」を作るのに苦労したことを思い出しました。今回の環境側チームの資料作りは、その意味では甘かったですよね。ぼくだったら、一番メッセージ性が強い点に絞って、両者に関係があると説得をかけたでしょうに。

えっ?結果?我がチームのエースストライカー・インドからお越しのお姉さまの圧倒的破壊力によって、相手側は完全に粉砕され、クラス皆による判定では歴史的な大勝利を収めました。いぇい。

↑今回の我がチームのキャッチフレーズだった (Air Pollution) Presumed Innocent。

水質汚染発祥の地

せっかくだから、もうひとつ発祥の地ネタ。

日本でも世界でも、ある川が汚れているか否かで最もよく使われる指標に、BOD (Biological Oxidant Demand)というものがあります。無理に日本語に訳すと、生物化学的酸素要求量(でもだれもこんなフルネームで読みません)。この発祥の地が、同じくロンドンのテムズ川です。

川の水の中には微生物くんがいっぱいいるので、何もせずほっておいても、汚れた汚染物質を勝手に食べて分解して、水を綺麗にしてくれるのですが、問題は、どの程度「ほっておくか」という点(長時間ほっておけばそれだけ消費するのは当たり前)。その世界標準は5日間と決まっているのですが、この5日間という数字、マンチェスターから海へ至るまでの300kmをテムズ川の水が流れるのに何日かかるかに由来しています。簡単に言えば、マンチェスターの汚染水が海に出てしまうのを防ぐため作られた基準です。

なので、「日本のように急流の河川には、こんな5日間ものんびりと実験した結果を使っていてはいけないのだよこれだから東京もんのやることはまったくぶつぶつ」と主張する研究者もいます。えぇ、それがぼくの大学の先生たちです。

まぁそんなマニアなネタに思いをはせつつ、ロンドンにお越しの際は、テムズ川を眺めてみてくださいませ。

Public Healthの発祥の地

おおよそ世の中のほとんどの学問は、あるスーパースターがすごい事をやりとげたのが始まりだと思うのですが、今日はそんな話。

イギリス・ロンドンの中心街ソーホー地区にちっちゃな井戸が残されています。ここが、Public Health発祥の記念地。1849年、ロンドンでコレラが大流行したときの事です。

当時コレラは、空気感染すると信じられていたのですが、

  • 地域全体にいきなり大規模に患者が発生
  • 患者が近くにいないのにいきなり発病
  • 従業員が水の代わりにビールを飲むことが許されているビール工場では、少数の軽症例を除いて発病者なし

という事態に直面し、「飲料水が原因では」という仮説を確かめるために、コレラ多発地帯で調査が行われました。

患者の場所をマッピング、さらにその地域の住民がどの水を飲んだかを追いかけ、患者はみなある特定の井戸水を飲んでいたことを突き止めたのです。そのまさに原因とされた井戸がこれ。

世の中のだれもが、コレラは空気感染だと信じられていたときに、死者がごろごろ転がっているレッドゾーンに乗り込み、調査を行ったのは、ジョン・スノー博士。現役ばりばりの超一流麻酔科医だったにもかかわらず、そんな無謀ともいえる行動を行ったスーパースター、Public Healthの生みの親です。

Public Healthの最も根幹を成す学問である疫学手法(病気が発生したときに、患者と無事な人を追いかけて、何が原因だったを探る手法)という分野は、彼の調査からスタートしたのです。この手法なくしては、タバコの有害性を証明するのも難しいくらい。

阿鼻叫喚する中、疫学調査に没頭したジョン・スノー博士の功績をたたえるプレートが、井戸の前に埋め込まれています。ご興味ある一部の方は大きくしてお読みください。

さて、今となっては普通の道路とかしているこの場所。でも、その一角には、ジョン・スノー・パブが立っています。お店の人いわく、世界中からPublic Health関係の研究者や行政官、学生たちが訪れるほか、毎年1回、彼の功績をたたえる大パーティーが行われ、世界中から「ジョン・スノー・ファン」が集まるとか。おそるべし、ジョン・スノー。


ロンドンにお立ち寄りの際はぜひ。

今日の一日

BostonLetter2006-05-02


8:00 学校に到着。コンピュータルームで必要な資料を収集・プリントアウト。

8:30-10:20 "The Ecology of Health in Development"
マレーシア、ペルー、コスタリカキューバケニアの各国を取り上げ、発展の違いをディスカッション。ぼくの担当は経済分野。海外からの民間投資額の違いを取り上げてみる。話しながら自分でも良く分かっていないことが良くわかった。

10:30-12:00 "Exposure Assessment for Environmental&Occupational; Epidemiology"
来週月曜やるプレゼンの準備のため、グループメンバーと打ち合わせ。とある化学物質(N,N-ジメチルホルムアミド)と生殖機能障害の関係を証明するための研究プロジェクトを計画立案せよというもの。どこの国のどの集団をターゲットにするかで激論。結局、台湾の合成樹脂産業をターゲットに。いいな、台湾。久しぶりに行ってみたいな(このプロジェクトは仮想の計画を作るだけで、実際に行くわけでは決してない)

12:00-13:30 お昼ごはん
Japan Tripの時に訪問したトヨタ記念病院の先生が学校に寄られたので、お食事をご一緒する。実は15年ほど前の卒業生。カフェテリアのメニューが当時とあまり変わっていないことに衝撃。

13:30-15:20 "Planning and Evaluation of Health Programs"
IMCI (Integrated Management of Childhood Illness)というWHOが行ったプロジェクト評価プロジェクトの評価。らしいが、予習をさぼったぼくは、当てられないように先生から隠れること必死。コールドコール寸前、やばいやばい。

15:30-18:00 打ち合わせ
Cafeに戻ると、参加しなくちゃいけない打ち合わせが3本同時並行で行われている。うち2つは授業のプレゼンの相談、1つは大学当局も巻き込んだイベントの企画。とりあえず流れで直前のスタディーグループ(日本の介護保険制度の評価)に参加するが、このグループ、出来が良いし(ありがとーございますです、tomoko先生)、イベント企画には日本人エースが参加しているし(どーもです、ayako先生)、明らかにやばそうな残り1個のStudy Groupに参加。フレームワークを決め担当を割り振り、今夜までにプレゼンを送りあうというところまで決めて、多大な不安を残しつつもとりあえず解散。「さて、それでは!」と思い最初のグループに戻ったら、まさに終わらんとせんところ。あー、なにもできんかったやんけ。すみません・・・。

25:00 プレゼンを作って送ってみる。ほかの3人は送ってこない。ありー、大丈夫かな・・・。

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