Public Healthの発祥の地

おおよそ世の中のほとんどの学問は、あるスーパースターがすごい事をやりとげたのが始まりだと思うのですが、今日はそんな話。

イギリス・ロンドンの中心街ソーホー地区にちっちゃな井戸が残されています。ここが、Public Health発祥の記念地。1849年、ロンドンでコレラが大流行したときの事です。

当時コレラは、空気感染すると信じられていたのですが、

  • 地域全体にいきなり大規模に患者が発生
  • 患者が近くにいないのにいきなり発病
  • 従業員が水の代わりにビールを飲むことが許されているビール工場では、少数の軽症例を除いて発病者なし

という事態に直面し、「飲料水が原因では」という仮説を確かめるために、コレラ多発地帯で調査が行われました。

患者の場所をマッピング、さらにその地域の住民がどの水を飲んだかを追いかけ、患者はみなある特定の井戸水を飲んでいたことを突き止めたのです。そのまさに原因とされた井戸がこれ。

世の中のだれもが、コレラは空気感染だと信じられていたときに、死者がごろごろ転がっているレッドゾーンに乗り込み、調査を行ったのは、ジョン・スノー博士。現役ばりばりの超一流麻酔科医だったにもかかわらず、そんな無謀ともいえる行動を行ったスーパースター、Public Healthの生みの親です。

Public Healthの最も根幹を成す学問である疫学手法(病気が発生したときに、患者と無事な人を追いかけて、何が原因だったを探る手法)という分野は、彼の調査からスタートしたのです。この手法なくしては、タバコの有害性を証明するのも難しいくらい。

阿鼻叫喚する中、疫学調査に没頭したジョン・スノー博士の功績をたたえるプレートが、井戸の前に埋め込まれています。ご興味ある一部の方は大きくしてお読みください。

さて、今となっては普通の道路とかしているこの場所。でも、その一角には、ジョン・スノー・パブが立っています。お店の人いわく、世界中からPublic Health関係の研究者や行政官、学生たちが訪れるほか、毎年1回、彼の功績をたたえる大パーティーが行われ、世界中から「ジョン・スノー・ファン」が集まるとか。おそるべし、ジョン・スノー。


ロンドンにお立ち寄りの際はぜひ。