環境派vs産業派

最近、まったく授業のことを書いていないので、ちゃんと大学に行っているということを証明するためにも、ちょっと今日の授業の様子を。

今日のEnvironmental and Occupational Epidemiology(環境労働疫学)の授業は、環境派と産業派に分かれ、ある物質の規制の要否についてのディベート。といっても、好き勝手に議論を進めていいのではなく、論点は、あらかじめ与えられた論文10本が、それぞれ、もしくは全体として、どの程度信頼性があり、一般化できるか結果を提示しているかに限定されています。つまり、

  • 調査対象としたグループに一般性はあるかないか
  • 原因A→結果Bという関係以上に、別要因Cが影響を与えていないか

などなど、言いがかりをいかにつけるか/かわすかがポイントです。論文も、一見、もっともらしい関係がありそうだけど、微妙に研究の組み立てなどに問題がある、ストライクゾーンからボール1個分はずれたものが用意されています。

で、今日のネタは、有機リン化合物とNon-Hodgkinsリンパ腫の関係について。あぁなんてマニアなネタ。

さて発表。15分ずつの各チームからのプレゼン、30分のチーム同士の質疑応答、15分の会場からの質疑応答を経て、最後に会場の投票によって規制の有無を判定するという仕組み。冒頭の両チームのプレゼンは、どちらも軽くジョブ。それほど大打撃を与えているようには聞こえない。その後のQ/Aセッション。産業側が立て続けに研究の甘さを突っ込む。といっても、産業側も「絶対関係がない」とまでは言い切れないようで、「今後とも調査が必要」という、まぁ当たり前の主張に落ち着いている。

やや均衡状態が続いたあとに、産業側がやや際どく攻め込んだところ、環境側が切れ気味に「そうやって文句を言えばいい。実験がしたかったら、あなたの家族でやればいい。その間にも人が死んでいくのを黙ってみていればいい。」とか言い出す。

あちゃー。

「理屈で負けそうだったら感情に訴えろ、感情で負けそうだったら理屈に訴えろ、理屈も感情も負けそうだったら、わめき散らせ」という議論の法則を地でいっている姿に感動しつつ、科学的な議論をしようと言っているときに、それはなかろうにと思って、ぼくは白けてしまいました。

その後の議論はどうでもよくなってあまり聞いていなかったのですが、結局、環境側の敗北。上手にやればもっとうまく丸め込めただろうになー、と思いつつ。とはいえ、判定者が科学者(の卵)ではなく社会一般だったら、今日の議論でも十分環境側が勝てたんだろうなと思うと、やはりイメージ論(というか感情論)が大切なんだろうなと思った授業内容でした。