環境ホルモンの法廷闘争

 環境ホルモン(という呼び方は間違っているので、本当は書きたくないけど、まぁいいや。内分泌かく乱物質、ED)に関連して、裁判所を通じて、喧嘩を売った人と売られた人がいます。これが、どこかの意味分からない市民団体が企業を訴えているならともかく、原告もその世界では超有名人、被告も超有名人。日本を代表する2人の学者の争いです。

 原告:松井三郎 京都大学工学系研究科教授(ぼくの研究室のボスが退官した後にやってきたセンセ)
 被告:中西準子 産業技術総合研究所化学物質リスク管理研究センター長(仕事上、お世話になったり戦ったりしたセンセ)

 残念ながら情報発信が中西先生側からしかないので、正確な判断ができるかどうか自信がないのですが、公開されている文章を読む限り、こんな大物二人がなにをやっているかとおもえば、これが全く意味が分からない争いというのが驚き。

 訴訟のきっかけになったのは、原告の松井氏が行った国際シンポジウムでの発表に対し、座長の被告中西氏がウェブで発表内容をまとめて、批判するコメントを書いたことによる。
そもそも、裁判所で争う話ではない

 以下、個人的意見。

 まず裁判について。いま世にでている資料を読む限り、今回の提訴に関しては、中西先生側の言い分に理があると思っています。といっても、その趣旨が分からない部分が多分にあるので、そのあたりは、松井先生側の言い分を聞いてみたい気がしますが。
 というわけで、

 だいぶ前から告知してきた、環境ホルモン濫訴事件の被告中西氏支援組織だが、やっとウェブサイトを作って公開できるようになったのでお知らせしたい。
環境ホルモン濫訴事件:中西応援団
http://www.i-foe.org/
 山本さん、浜田さん、私の三人で、「ネット評論と濫訴を考える会」という小さな支援組織を作った。おそらく、みなさんが一番見たがっていた、訴状や、提訴の理由となった中西雑感の全文を一挙に掲載している。また、訴訟に至るまでの当事者の行動も、時間を追ってまとめた。掲示板も設置したので、ぜひ利用してほしい。馬鹿げた訴訟にNo!という世論を盛り上げていければと思う。

環境ホルモン濫訴事件:中西応援団

 というご主張に賛成し、トラックバックを送ってみます。ご関心ある方は、是非、リンク先にも寄ってみてくださいませ。

 ちなみに、元発言について。プレゼンの仕方はともかく、「次はナノ粒子」というそのエッセンスは賛成。環境ホルモンについては、たしかに、摩訶不思議な挙動をしているし、生殖系に関するネタ(=人類を破滅できる)を含んでいるので、重要かとは思うけど、一時期のような「信号が青いのも、ポストが赤いのも、みーんな環境ホルモンのせい」(いまだったら、アスベストのせいか)みたいな雰囲気はよくないと思っております。一方、ナノ粒子は世間の認知度は低いけど、その有害性(のおそれ)は高いと恐れられている(まだ良く分かっていない)ので、その警鐘は必要かと。日本でも調査をスタートさせていたし、ヨーロッパはもとより、アメリカ(少なくともうちの大学)でも結構本腰いれて研究が行われているんですよね。

 あと、これは全く立場的な問題なのですが、中西先生の説には納得しない点があったのですが、あまり質問(議論)することが許されない状況でもこれあり、なんとなく消化不良の印象が残っております。たぶんこれが、中西センセに対して、あまりよい印象は現時点で持っていない原因かと。ただ、あれだけ一般向けに情報発信を続けてきたこと自体は尊敬に値すると思っております(中西先生のサイト)。ちょっと難しいですけどね。

 しかしまぁ、なんつーか。二人とも、世間に対するインパクトの強い人なんだから、どうか、こんな無駄なことに時間を注ぐよりも、講演会の1本でもやってほしいものです。