縦並び社会・格差の現場から

毎日新聞が12/29から連載している「縦並び社会・格差の現場から」が面白い。

 「一億総中流」時代は終わり、格差が広がりつつあります。効率追求の競争はますます激しく、会社も人も「勝ち組」「負け組」にはっきり分かれようとしています。自殺は毎年3万人以上、生活保護は100万世帯を超すという現実が私たちの眼前にあります。これが「頑張れば報われる」新しい社会像なのか。それともセーフティーネット重視の相互扶助型の社会を選ぶのか−−。海外にも目を向け、日本の目指すべき針路を読者とともに考えます。

12月29日 ヒルズ族になれなかった男
12月30日 派遣労働の闇
12月31日 眠りながら走れ
1月2日 年金移民
1月3日 患者になれない
1月4日 時給は288円
1月5日 株に乗り遅れるな

アメリカに来て思い知らされたことの一つに、「ここ(アメリカ)は、頑張れば報われる社会ではちっともない」ということ。生まれた瞬間に、だいたい、その人の運命は決まっているように思う。

まず、ここハーバード大学に来ている学生の素性。「普通の親の下に生まれて、努力だけでがんばってハーバードに来ました」と言えるような人は、日本とせいぜい韓国・台湾くらい。東大入学者の親平均年収が1000万円という記事が数年前でていた記憶があるが、ハーバードに来る他国の学生は、たぶん桁が1桁違うような気がする。途上国からの留学生はもちろんのこと(親が軍のトップだったり、大財閥の娘だったり)、アメリカ人にしても、上流階級の娘息子しかいない。もちろん、彼/彼女らは努力もしているし、優秀だとも思うが、そもそも教育にお金をつぎ込めるというのは、やはり、親がそれなりに裕福でないとムリなのであろう。

そして、日本よりもはるかに学歴社会(というかコネ社会)のアメリカでは、ある程度の大学を卒業していないと、自分の行きたい会社に絶対就職できない。なぜなら、アメリカでの多くの会社では、大体のポストは、コネ入社(日本で言うところの「裏口入社」)で決まる。8割の就職はこのラインで決まるらしいので、裏口どころではなく堂々とした正門である。就職活動=自分のコネ網を増やすこと、という概念を知ったときは、かなり驚いたが、そんな国なのである。そして、ある程度の大学を出ていると、教授陣なりゲストスピーカーなど、OB/OGなりのあらゆる手段を使って、たいていの会社にまではたどり着けるが、そうでなければ、入り口にすら入れないのが現状らしい。

最後に賃金格差。よく授業で使われるグラフだが、同一企業内の社長と一番下っ端の賃金格差を見てみると、日本はたったの10倍に収まっているが、アメリカでははるか右側まで棒グラフが延びている(なお、このデータはちょっと古いので、最近ではもっと広がっているはず)。

つまり、トップレベルは高収入を得ていても、同じ会社には比較にならないほどの低賃金労働者も存在しているということになる。また、日本と違い専門性が高いので(技術者からモップかけまで)、たぶんそのような低賃金労働者の方が昇進することは絶対ないのであろう。

いずれにせよ、毎日の記事に書いてある大部分のことは、アメリカがとっくの昔に経験していることが多いような気がする。とはいえ、アメリカはそのような格差を前提として社会設計がされている。移民や人種、宗教観などすべてが異なる日本でアメリカと全く同じ道を歩むとは思えないけど、少なくとも、自分の身を守るための術をもっと見につける必要があるのは、間違いないだろう。