アンテナにみる人間分類

 友達がみんな、自分の日記をホームページに公開していたんですよ。僕は当時、サイクリング部に所属していましたが、ある人が、クラブ関係者が作っている日記ページだけを集めたリンク集を作ったんです。

 トップページじゃなくて、日記ページだというところがポイントです。トップページはブックマークから行けるけど、僕が行きたいのはそこからリンクしている日記ページなんですね。誰もトップページなんてわざわざ見たくない。そこへ突然、日記へのダイレクトなリンク集があらわれて、それが便利なことが分かると、全員がすぐに使い出した。これが衝撃的だった。

 いま思うと、そんなの当たり前じゃないですか。でも、リンクはトップページに張るもの、という当時の常識を壊して日記へのリンク集を作ったら、いきなりグループ全員が使い始めたのを目の当たりにして、「ちょっとした発想の転換が、すごく人の行動を変えるんだ」と思ったんです。

 次にそういった機能をアンテナソフト(※よく見るWebページを登録しておくと、更新があったときに通知してくれるサービス)に組み込んだ人たちがいたんです。「なつみかん」などのフリーソフトですね。そうしたら、この前までダイレクトリンク集を使っていた人たち全員がざーっとそちらに動いて。それを見ていて、「これって進化だよな」と思ったんです。

 あっちからこっちに変わった瞬間にみんながこっちを使って「進化」する。これは、それまでは「道具が足りてなかった」ということですね。

 そういう場面を目の当たりにすると、僕はその先を考えてしまうんです。「それをもうちょっとつなげて、文字がすこし見えたりすると面白いんじゃないか」とか。

 インターネットというのは、そういう「考える余地」みたいなものが非常に溢れている感覚があるんです。そこにすごい可能性を感じて事業を始めたんだと思います。

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うーん、なるほど。

①とりあえず現状が不便なので、必要最低限でいいので、利用者に便利なサイトを作りたかった人
②それを見た技術力がある人が、さらに便利にするために、機能改善に励んだ人
③こんな便利なことができるなら、仲間内だけでなく、万人に使ってもらうべく努力した人

の3種類の人種がいたわけですね。それぞれにかかわった人間を思い出してみると、たしかに、サイト作りだけでなく、仕事であれ研究であれ私生活であれ、あらゆることに対して、こんな傾向を見せているような気がします。人間はこんな風にも分類できるんですね。面白いですね。あなたはどのタイプ?

ちなみに、ちょっと思い出話をすると、ぼくが最初にこのリンク集を公表した時は、「リンクはトップページにするのが作者に対する敬意だろう」とか「おいしいところだけつまみ食いするのは、感じ悪い」とえらく言われたものでした。まぁ内輪の話なので、どこまで本気か分かりませんが。みんな使っていたし。アンテナ機能の搭載は衝撃でした。こんなことができるんだって。そして、はてなアンテナ人力検索についで一番好きなはてなの機能です。

そういえば、この時のメンバーでのサイト作りは、面白かったなぁ。いや、ホームページだけでなく、生活すべてが破壊力強すぎでしたからね、サイクリング部というところは。